肩の痛み

   上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)とは
上腕二頭筋(いわゆる「力こぶ」の筋肉)は、上部で2つの腱に分かれて肩の骨に付着しています。そのうち長い方の腱である「長頭腱」が、肩の関節近くにある骨の溝(結節間溝)を通る際、摩擦によって炎症を起こした状態を上腕二頭筋長頭腱炎と呼びます。
腕を上に挙げる、後ろに引く、あるいは重いものを持ち上げるといった動作で、肩の前側にピンポイントで痛みが出現するのが特徴です。
主な原因と病態
  • 使い込み(オーバーユース)と加齢変性
    日常的に肩や腕をよく使う仕事(重労働、搬送作業など)や、野球・テニス・水泳といったオーバーヘッドスポーツ(腕を高く振る動作)の繰り返しにより、腱と骨の摩擦が続いて発症します。また、加齢に伴い腱の柔軟性が低下することも大きな要因です。
  • 巻き肩や姿勢不良
    猫背や巻き肩の姿勢では、肩甲骨の位置がズレて長頭腱にかかる負担が増大し、炎症を起こしやすくなります。
このような症状はありませんか?(チェックリスト)
  • 肩の「前側(ピンポイント)」を押すとズキッと痛む
  • 腕を上に挙げる、または後ろに引くと肩の前が痛い
  • 荷物を持ち上げたり、肘を曲げて力こぶを作ると痛む
  • ジャケットや上着に袖を通す動作で痛みが出る
  • 夜、痛む方の肩を下にして寝ると痛む(夜間痛)
当院・整形外科で行う主な徒手テスト法(検査法)
長頭腱炎の有無や痛みの原因を特定するため、以下の整形外科的テスト(徒手テスト)を実施します。
1. Speedテスト(スピードテスト)
  • 方法:患者様には肘を伸ばし、手のひらを上に向けて腕を前に挙げてもらいます。施術者が上から腕を押し下げるように抵抗をかけます。
  • 判定:抵抗に逆らって腕を挙げる際、肩の前面(長頭腱の走行部)に痛みが出現すれば陽性(長頭腱炎の疑い)となります。
2. Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)
  • 方法:肘を90度に曲げた状態で、手首を内側から外側へひねる(ドアノブを外側に回すような動作)ように動かしてもらいます。施術者はその動きに対して反対方向に抵抗をかけます。
  • 判定:抵抗に逆らって手首を外側にひねる際、肩の前面の溝(結節間溝部)に痛みが出現すれば陽性となります。
五十肩や腱板断裂との違い
肩の痛みは原因が多岐にわたるため、適切な見極め(スクリーニング)が極めて重要です。
疾患名主な特徴と痛みの部位
上腕二頭筋長頭腱炎肩の前側に痛みが集中。腕の屈曲や手首の回転、荷物の持ち上げで増悪する。
五十肩(肩関節周囲炎)肩全体がズキズキ痛み、関節が固まって全方向に動かなくなる(拘縮)。
腱板断裂(棘上筋など)肩の上部〜外側を中心に痛むことが多く、自力で腕を挙げ続けるのが困難になる。
石灰沈着性腱炎突然、激痛(夜も眠れないほどの激しい痛み)が肩に走り、動かすことが困難になる。

当院での施術方針
触診や徒手テストにより長頭腱炎が強く疑われる場合、状態に合わせた適切なアプローチを行います。
  1. 超音波施術(物理療法)
    深部の炎症部位へ直接アプローチし、細胞の修復促進と痛みの緩和を図ります。
  2. 手技療法・ストレッチ
    長頭腱にかかるストレスを減らすため、胸の筋肉(大胸筋・小胸筋)や肩甲骨周り、上腕二頭筋自体の柔軟性を高めます。
  3. 運動指導・姿勢改善
    症状が落ち着いた後は、再発を防ぐための肩甲骨の連動運動や日常生活での身体の使い方を指導します。
医療機関(整形外科)との連携・紹介状について
当院で対応可能な施術範囲であれば全力を尽くしてサポートいたします。
しかし、徒手テストや症状経過から腱板の完全断裂や著しい構造的損傷が疑われる場合、あるいはレントゲン・MRIによる画像検査や注射療法・消炎鎮痛剤の処方が適切であると判断した場合は、速やかに整形外科へご紹介いたします。
無理に当院のみで抱え込むことはせず、患者様にとって最適・最善の医療選択ができるよう紹介状の作成・医療連携を行っております。「どこに相談すればいいかわからない肩の痛み」も、まずは安心してご相談ください。 
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